オトトキ
【ネタバレあります】
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オトトキは2016年1月8日突如再集結を果たしたロックバンドTHE YELLOW MONKEYの一年を追ったドキュメンタリー映画。
だと思って観に行ったんです。
あれ?
いや、たしかに映画の軸はTHE YELLOW MONKEYというバンドとライブツアーなんだけど、そこで浮き上がってくるのはTHE YELLOW MONKEYというひとかたまりのバンドではなく、ロックを仕事にする4人の男性でした。
単なる一年の記録のフィルムだったとしてもTHE YELLOW MONKEYの映画としてはカッコいいものができたと思うのですが、実際はもっとデリケートでディープで力強いドキュメンタリー映画でした。
前半部のキーは
菊地兄弟のお父様がツアー中に亡くなったという話題。
そこから、兄弟の仕事観、家族観が語られ、他メンバーの家族の話。
ヒーセがステージ袖でみんなをハグするシーンに彼の優しさとか温かさが滲んでいて素敵でした。
近年の吉井さんは父性がすごいなと思ってましたけど、THE YELLOW MONKEYというバンドは父親というのがキーワードなのかなぁと思いました。全員50超えてるので当たり前といえば当たり前なんだけど。
ものすごい個人的な話で申し訳ないのですが、私は自分の育った家庭があんまり上手くいかなかったので物心ついた時には家に父はいなくて、その辺がすっぽり抜け落ちた状態で生きてきて、足りないから吉井さんにひどく引かれるのではないかと思っています。
後半戦のキーは
体調
もちろんケアをして鍛えてそれでもやっぱりあれだけの仕事をこなせばどこかにガタが来る。
それは足腰とか手とか喉とか様々。
この映画で私が最も泣いたのは、2017年の元日に出演したフェスで吉井さんの声が出なくなる場面。
本当に本当にただただ怖かった。
吉井さんから歌が奪われることが本当に恐ろしかった。
実際にそこにいたわけではなく、ネット上の情報しか知らなかったけど、いざ目の当たりにしたら思った以上に喉は深刻だった。
そのあと、休養をして今は歌えることを知っていても本当に本当に怖かった。
ただ、本人たちは冷静で「ああ、4人なんだな」とぼんやり思った。
実際に声が出なくなる前段階のホールツアーの愛媛の時点で吉井さんは体調を崩し、機嫌も悪い。テレビにもたくさん出ていた、メカラウロコのリハもしてたでしょう…
あの頃、「パンドラの二の舞にならない?」と思った人も多かったのでは?
私は見事にそう思ってたよ。怖かった。
ただ、実際に映画を観てみると4人は4人で何とかしてたんだなー。パンドラの時のようにならないのはやっぱりみんな年取って大人になったんだなぁ。
THE YELLOW MONKEYへの信頼度はものすごく高いけど、だからこそこれからはもう少し余裕を持った活動をしてもらいたいなと思いました。
何度も言うけど、あの声が出なくなった日、本当に怖かったんだよ。
全編を通していろんなタイミングのインタビューが細切れに出てくるんだけど、最後の方の吉井さんのインタビューの中で
「家族は嫌でも取り換えられない」
というような言葉があって「ああ」と思いました。
ソロはサポートメンバーが変わっても、1人でやっても自分の名前で活動ができるけど、バンドはそうじゃないんだよね。4人が揃って初めてTHE YELLOW MONKEYなんだよね。
家族と同じで、盛大な反抗期を経て、大人になってさらに仲良く程よい距離感で生きていける。
そういう場所がTHE YELLOW MONKEYなのでしょう。
これからもTHE YELLOW MONKEYのメンバーとしてますます活動に励んでいただきたいと思うと同時に、各々のソロ活動でもTYMで仕入れた新しいコトを反映し、さらにそこで得たコトをTYMに反映してパワーアップして行ってほしいなと思います。
休んでいた時間が無駄でなかったことは今の4人を見れば明らかなことだし、最後の主題歌をエマが作ったということが、ソロの結晶みたいな気がして、ソロを愛してきた人間としては非常に嬉しかったです。
監督の狙い通り、これから先がとても気になる4人を見せてもらったし、これから先も4人をずっと見ていきたいと思いました。
バンドでもソロでも音楽と真剣に遊んでますますかっこいいジジイになってほしいなと思います。
そう、トニー・ヴィスコンティ氏、めちゃめちゃかっこよかったからね。「彼らはまだ若い」って言われちゃってますから。
THE YELLOW MONKEYの未来はまだまだ長い。
いい映画でした。面白かった。
ものすごく、フラットで、サラッとしてた。
思い入れ強い人が作っちゃうと、多分いろんな解釈の違いで「嫌だ」と感じる部分が多々ありそうなんだけど、監督があんまりTYMに思い入れない人だから変な偏りがなくて非常に見やすかったです。
オトトキ、また劇場で観たいな。